新規就農者に思うこと
今日、農園で仕事をしていた私の携帯に不思議な電話がかかってきました。どこかで私の携帯番号を聞いたとかで、相手は見知らぬ女性でした。その女性からいきなり「住み込みで農園で働かせてほしい」と言われました。
いきなりそんなことを言われた経験がなかったもので、丁寧にお断りさせていただきましたが、その女性は、なおも「農園で住み込みで研修をさせてもらいながら、全国をてんてんとしている。もうお金もないし、どこかで働かないと困るんです。将来は土地を借りて農業をします」と切々と訴えられました。私も詳しくは知りませんが、ボラバイトと言う形で、農園で住み込みで研修がてら働いている人たちがいるということを伝えました。
が、ふと声が落ち着きすぎているのが気になって、「失礼ですが、お歳は?」と聞くと「53歳です」との返事。これには私も困惑しました。私の見聞の範囲ですが、ボラバイトの人たちは、20代がほとんどなのです。その人たちが、大きな農場では、一部屋に何人かで共同生活したりしています。年齢的に、50代は受け入れてもらいにくいだろうな、と思ったので、その難しさを伝え、それでも挑戦するなら、インターネットカフェでインターネットで調べてください、と言って切りました。
夢追い人なのか、追いつめられた人なのかはわかりませんが、農業ってそんなに甘い世界ではないのにな、というのが私の感想です。先日の経済新聞の論説に掲載されていたものですが、日本の農業従事者299万人の生産額より、パナソニック、一社に働く31万人の売り上げ高の方が多いそうです。
政府は不況でリストラされた人たちの雇用先に農業を、ということでいろいろ政策を打ち出していますが、でも、農業は従事者が少ないわけではないんです、高齢化が進んでいることが問題なのです。それに、農業は徒手空拳でできる職業でもありません。農業で生計をたてるためには、機械等の設備投資が必要です。また、定年退職した人たちが、趣味と健康の為に農作物を栽培し、それを直売所で売っています。が、この人たちは余ったから売っているのですから、価格はいくらでもいいという感覚です。その結果、価格引き下げ競争になり、農業で生計をたてている人たちの生活が脅かされています。
どの稼業でも同じでしょうが、農業もまじめにコツコツ働いたからといって、生活を保証される職業ではありません。新規就農を考えている人、私は仲間が増えることは歓迎ですが、でも、よくよく考えてね、ロマンの世界ではないよ、と言いたいのです。